SEISYuNってやつ

今年現場に行ったなかで、印象に残っている現場のひとつがガムシャラサマーステーション8月15日2部の者覇公演。わたしがサマステのなかで1番行きたかった公演。そして本戦での者の最終公演というだけでなく、結果的にどのチームが決勝戦に進むのかを分ける決定的なものにもなった公演だった。チーム覇を応援しながらも、あの日のチーム者があまりにアツくて未だに忘れられなくて、だから今回はチーム者に焦点を当てて書くことにした。今後自担のいないチームにここまでの熱量を抱くことはない気がする。参考までに、現場に行ってから時間が経っているのもあったので自分のメモとそれをもとにしたツイートを見返しながら書いた*1*2

わたしの担当のいるチーム覇はそのとき6勝7敗で、次の日にあと2公演残していたもののその相手は暫定1位だったチーム武だったため決勝戦に進出するためには今日少しでも勝ちを取っておかないといけない状況だった。一方でチーム者は7勝8敗。ここで勝ちを決めればdb数次第では決勝戦に進めるけど、負ければ決勝戦進出の可能性は確実に0パーセント。本当に本当に後がない状況だった。

どちらも今まで以上に全力でパフォーマンスをしていた。db数は覇は115、者が112。でもJr.票が7対5で覇のほうが多かった。合計結果が130対123になって、勝ったのはチーム覇だった。

結果が発表されたとき、負けた側は悔しい顔をするんだろうなっていうのは今までの公演からしても経験済みだったし、そうじゃなくても単純に想像はついた。でもそのとき者の子たちがした表情は「なんで?」とでも言うかのような困惑した表情だった。わたしにしたら逆に彼らがその表情をしたことが咄嗟に理解できなくて「なんで?」状態だった。でも今考えると少しは分かる。きっと彼らは勝つことをこれっぽっちも疑ってなかった。

彼らが勝ちを疑わなかったのは分かる。まず状況からしても、彼らが勝つ体制はばっちりと言っていいほど整っていた。全公演のうちラストの公演であり、ノーミスでのフィニッシュを迎えることができ、ここで勝たないと決勝進めないことが確実であり、者は去年からdb数が高くて者担には力を入れてるひとも多かった。ファン側からしてもこれほどまでに勝ってほしい、勝たせたいと思うシチュエーションは正直なかなかない。そしてJr.票がさらに彼らに追い打ちをかけた。

去年の時点で、ファンによるdb測定とJr.票の存在には様々な意見が飛び交っていた。もっとも平等な審査方法なんて未だに分からないけど、この日者のファンが願った通り、彼らはdb数では覇に勝っていた。でもJr.票で負け、そして結果的にも負けた。db数で勝ったことは彼らにとってせめてもの救いにはなったかもしれないけど、でもだからこそJr.票との合計で勝てなかったことが悔しかったんじゃないかと思う。

こんなに長々と書いたけど、彼らはここまで考えてなかったかもしれない。ただただ今日が本戦で最後だから、最後はきちんとノーミスで行こうって、それだけだったかもしれない。そして現にやりきって、やれることは全部やったって気持ちだけだった。パフォーマンス後に嬉しそうな顔をしてノーミスだったことを伝えてくれて、きっとそれがすべてだった。

本気で臨んだ結果、自分のチームを褒めるのもあれだけどって言いながらも「神宮寺かっけーわ」って思わず言った萩ちゃんの気持ちがよく分かるくらいにリーダーの神宮寺も、他の子たちもかっこよかった。だからこそ「完成形が見せられた!」って喜びながら、成功の余韻にだけ浸っていたくて「決めなきゃだめなの?」って言った神宮寺の気持ちに会場みんなが共感してたと思う。結果発表の前にマイクを置き、5人で肩を組んで地声で「オッ!」と叫んだ声はよく響いていた。

やれることを力の限り全部やりきって、信じたい気持ちと本当に信じている気持ちがいっしょになって、それでも結果がついてこなかったとき、ひとってそれがすぐに信じられなくて受け入れたくなくて、不思議そうな疑問を浮かべた顔をしてしまうものなんだということを初めて知った。小さな声で「こんなはずじゃなかった…」って呟いた萩ちゃんのなかに負ける構図なんてこれっぽっちもなかったことはすぐに分かった。

結果発表後に2チームと真田くんが話をするときも彼らは黙ってしまっていて、神宮寺は口もとにマイクを持っていってはいたけど、まともに喋れてたのは萩ちゃんくらいだった。いつもあんなにうるさい挙武も1番みんなを引っ張ってくれていた田島くんも下を向いて黙り込んで、げんげんは者のメドレーの途中に口角を下げて静かに泣いていた。自分のソロの前、目をぎゅっと瞑って涙を拭った神宮寺はめちゃくちゃ綺麗だった。悔いは残ってない、本気を出したんで、そう言いながらも彼の目が、表情が、それ以上に多くを語っていた。力を入れていないと涙も気持ちも止まらなくなってしまうかのように声を張って歌っていた。喉も痛くて、心も苦しいだろうに、これでもかというほどしっかり歌っていた。

者のメドレーで者の誰よりも早くにこにこしてくれてた萩ちゃんやOh Yeah!で客席を見てそっと笑みを浮かべた神宮寺、にこってしてたのに次の瞬間後ろを向いてしまったげんげん、いろんな笑顔があって、全部ぜんぶ青春だなぁとぼんやり思った。

覇と戦えてよかったと言ってくれ、覇にすべてを託しますと言ってくれた者の思いをすべて背負った覇も、結局決勝戦には進めなかった。でもあの日見た公演はわたしのなかで最強の2チームが戦っていた公演として記憶されてるし、誰が何と言おうと強くて美しくてかっこよかった。

結果より過程が大事だと強く思う。頑張れることは当たり前で、だからこそ結果が欲しかった彼らにそれを言うのは酷かもしれないけど、でもわたしはあの日者のパフォーマンスが見られて確かに幸せで、幸せだと思わせてくれたのは彼らが本気だったから以外に他ならない。努力してもどうにもならないことがあるなんてまだ10代の彼らには知って欲しくなかった気持ちもある。だけどいつか、ステージで輝く彼らを見て、「一皮向けられました」と言った神宮寺の言葉をふと思い出し、その成長を実感できるなんて素敵な日が来ることを、心から願っています。